Special Interview

お客様とともに描く循環型社会の未来

2026.10.15
ご担当者(部署・肩書は取材時)

経営企画部 サステナビリティ推進室室長 鈴木 孝弘様
総務法務部 兼経営企画部 サステナビリティ推進室課長 西谷 貴史様
経営企画部 サステナビリティ推進室課長 木下 浩美様
※2026年8月時点の肩書

2008年に環境省「エコ・ファースト制度」の第1号認定を受けられた後、2009年12月に設立された協議会を幹事企業として牽引されている株式会社ビックカメラ。省エネ家電の普及促進やスマホアプリを通じた生活者へのエコ浸透の取り組みや、それらを長くつづけるコツまで、たっぷりと取材しました。

1. 環境配慮への取り組み(事業の視点)

ーービックカメラ様は、「エコ・ファーストの約束」の中で、省エネ家電製品・サービスの普及促進を強力に推進されています。店頭でお客様と直接向き合う小売業として、この普及促進の取り組みの中で特に手応えを感じている部分について教えてください。

西谷氏(以下、西谷):当社が以前から社会的責任として推進しているのは、省エネ家電の普及促進です。家電製品は毎日の生活の中で使われるものだからこそ、省エネ性能の向上が環境負荷の低減に直結します。
従いまして、私たちは、店頭にお越しいただいたお客様に対して、省エネ家電の特長や価値をわかりやすくお伝えし、その普及を後押しすることが大切な役割だと考えています。

私たちは、お客様とメーカー様をつなぎ、商品の価値や優れた性能を分かりやすくお伝えする役割を担っていると強く認識しています。こうした商品の普及を後押しするために、行政もさまざまな施策を展開しています。その一つが「統一省エネラベル」です。お店などでご覧になったことがあるかもしれませんが、星の数で省エネ性能が視覚的に確認でき、年間の消費電力なども簡単に比較できる仕組みになっています。このような行政の後押しもいただきながら、社会から求められる役割を果たしていくことに使命感と確かな手応えを感じています。

鈴木氏(以下、鈴木):もちろん行政からの後押しもありますが、何より重要なのは「お客様が何を求めているか」という視点だと考えています。当社は「“お客様喜ばせ業”をつなぎ、期待を超える」というパーパスを掲げています。省エネ家電も、環境にやさしいというだけでなく、電気代の削減や快適な暮らしにつながる商品です。だからこそ、お客様に喜んでいただき、より豊かな生活を実現していただくための商品としておすすめしています。

ーーちょうど東京都で「東京ゼロエミポイント」が実施されていますよね。非常に影響が大きい事業だと感じます。私自身も冷蔵庫を買い替えた際に8万円の還元があり大変助かったのですが、これは東京都限定の取り組みなのでしょうか。

西谷:エコポイント制度は、約15年前の地デジ化の時期に導入され、その後も省エネ家電の普及促進策としてさまざまな形で展開されてきました。東京都では現在も「東京ゼロエミポイント」として実施されており、省エネ性能の高い製品への買い替えを後押しする制度として、多くのお客様に活用いただいています。

私自身が制度運営に直接関わっているわけではありませんが、以前、行政の会議で環境省からエコポイント制度の今後のあり方について意見を求められたことがありました。その際、「対象商品は比較的高価格帯のものが多く、買い替えに踏み切れない方も少なくない。普及をさらに進めるためには、長年同じ製品を使い続けている方や、買い替えのきっかけがない方にもメリットが伝わる仕組みが必要ではないか」と現場でお客様と接している立場からお話ししたことがあります。

その後2年ほど経ち、単なる買い替え促進にとどまらず、「長年使用した古い機種からの買い替えにポイントを付与する」といった仕組みが実際に導入されました。現場を含むさまざまな意見を丁寧に吸い上げながら制度が発展していく様子を見て、行政の継続的な取り組みには大変感銘を受けました。

2. 身近な暮らしの視点(お客様参加型の取り組み)

ーーサーキュラーエコノミーの実現も約束の一つに掲げられていますが、小型家電リサイクルなど、お客様が店舗を通じて参加できる身近な環境への取り組みがあれば教えてください。

西谷: まず、当社グループの強みとして、中古販売や買取を手がける「ソフマップ」の取り組みが挙げられます。ソフマップでは「ラクウル」というアプリを提供しており、その中に「持ち物帳」という機能があります。当社としても活用をおすすめしている機能で、ビックカメラで購入された製品を登録しておくと、市場価格を踏まえた査定額や資産合計額をアプリ上で確認できます。
これにより、「どのタイミングで売却するのがよいか」といった判断がしやすくなり、お客様にとって不要になった製品を次の利用者へつなぐきっかけにもなります。当社では中期経営計画においてリユース・リサイクルの強化を掲げていますが、その実現に向けた取り組みの一つとして、サービスの拡充を進めています。
また、東京都の「東京ゼロエミポイント」のような省エネ家電購入支援制度についても積極的に情報収集を行い、店舗でご案内しています。省エネ性能だけでなく、こうした支援制度もあわせてお伝えすることで、お客様が無理なく新しい省エネ家電へ買い替えられる環境づくりを心掛けています。

鈴木: 別の視点として、当社では2001年にグループ会社である「フューチャー・エコロジー」を設立しました。一般的には、販売とリサイクル処理は別々の事業者が担うことが多いのですが、当社グループでは販売から回収、リサイクルまでを一貫してグループ内で対応できる体制を構築しています。これは当社グループの大きな特徴の一つであり、循環型社会の実現に向けた重要な強みだと考えています。
現在、フューチャー・エコロジーでは、行政や関係団体と連携しながら、家電リサイクルに関するさまざまな課題の解決に向けた実証実験に取り組んでいます。例えば、リサイクル家電の埋立処分量の削減や資源循環の高度化を目指し、「回収した炊飯器の部材を再び炊飯器の部材として活用する」といった『水平リサイクル』の実証実験にも参画しています。
水平リサイクルの実現には、行政、製造メーカー、小売事業者、リサイクル事業者など、多くの関係者の協力が欠かせません。当社も小売事業者としてその一翼を担い、フューチャー・エコロジーとともに取り組みを進めています。
本格的な実用化に向けてはなお多くの課題がありますが、販売からリサイクルまでを担う当社グループならではの強みを活かしながら、今後も資源循環の促進と循環型社会の実現に貢献していきたいと考えています。

  • 経営企画部 サステナビリティ推進室 室長 鈴木 孝弘様
  • 総務法務部 兼経営企画部 サステナビリティ推進室課長 西谷 貴史様
  • 経営企画部 サステナビリティ推進室 課長 木下 浩美様
3. 認定第1号企業としての歩み・連携(リーダーシップの視点)

ーー2008年に環境省「エコ・ファースト制度」の第1号認定を受けられた後、2009年12月に設立された協議会を幹事企業として長らく牽引されています。これまでの活動の中で、他加盟企業との連携で印象に残っていることや、先進的な取り組みを継続・社内浸透させるための経営陣との連携のコツがあれば教えてください。

西谷: 当社のサステナビリティ担当メンバーは決して大人数ではありませんが、2024年に現在の体制となって以降、エコ・ファースト推進協議会の活動にこれまで以上に積極的に関わり、第1号認定企業としての役割を果たせるよう取り組んでいます。リソース面で大規模な施策を単独で推進することは容易ではありませんが、だからこそ加盟企業の皆様との連携を大切にしながら、協議会の発展や環境価値の創出に貢献していきたいと考えています。
加盟企業の皆様との連携で特に印象に残っているのは、毎年開催されている「学びのフェス」です。昨年度は戸田建設様が中心となって運営され、そのノウハウを学ばせていただきながら参加していました。今年度は当社が中心となり、加盟企業の皆様との出展調整やコミュニケーションの促進に取り組みました。その結果、協議会全体としての一体感が深まり、多くの皆様にご協力いただきながらイベントを開催することができました。エコ・ファースト推進協議会の活動の中でも、特に印象深い取り組みの一つとなっています。
また、先進的な取り組みの継続や社内浸透についてですが、家電小売業は製造業のように工場由来の環境負荷を直接抱えている業態ではありません。そのため、環境への取り組みをわかりやすい形で示すことが難しい側面もあります。だからこそ、私たちは小売業として果たすべき役割を一つひとつ着実に実行していくことを大切にしています。
経営陣との連携については、サステナビリティをより自分事として捉えてもらうため、会議運営にもさまざまな工夫を取り入れています。従来の報告中心のスタイルだけでなく、プレゼンテーション形式を採用したり、議論しやすい会議環境を整えたりすることで、役員同士が活発に意見交換できる場づくりを進めています。形式にとらわれず対話を重視することで、サステナビリティ課題に対する理解や関心の向上につながっていると感じています。

鈴木: 現在、執行役員以上のメンバーが全員参加する「サステナビリティ推進委員会」を原則毎月開催しています。先日は「人的資本」をテーマに、人財をいかに戦略的に活かしていくかについて議論しました。
サステナビリティは時に担当部門だけの課題と受け止められがちですが、本来は経営そのものに関わるテーマです。そのため、さまざまな切り口で対話を重ねながら、理解と浸透を図る取り組みを継続しています。

木下氏(以下、木下): 先ほど話題に出た「学びのフェス」では、エコ・ファースト制度のさらなる認知向上と浸透を意識して取り組みました。協議会の活動の中でも、「学びのフェス」はお子様や保護者の皆様と直接触れ合える貴重な機会です。そのため、小学生向け新聞への広告掲載などを通じて、エコ・ファースト推進協議会の活動や「エコのプロ」としての取り組みを広く発信し、認知拡大に力を入れました。

鈴木:私自身がこの業務に携わってまだ2〜3年ほどですが、協議会が発足した2009年当時は「ESG」や「SDGs」といった言葉もまだ一般的ではなく、事業成長との両立というよりは、「CSR(企業の社会的責任)」やボランティア活動の色合いが強い時代だったと思います。そのような中で、当社がエコ・ファースト制度の第1号認定企業として活動を続けてきたことは、非常に誇らしく感じています。

木下:また、エコ・ファーストの約束の一環として、加盟企業であるJAL(日本航空)様との共同取り組みを実施した実績もあります。子どもたちを対象とした環境教育の一環として、当社グループのフューチャー・エコロジーのリサイクル工場をご見学いただき、家電製品がどのように解体・再資源化されるのかを学んでいただくとともに、JAL様の環境への取り組みについてもご紹介するイベントを継続的に開催していました。
このように異業種の企業と連携しながら環境教育の場を提供してきたことも、私たちにとって大切な歩みの一つです。なお、本取り組みは現在、コロナ禍等の影響により一時休止していますが、非常に意義のある活動だったと考えています。

4.メッセージ・未来への展望

ーー最後に、このメールマガジンを読んでいる各社のサステナビリティ担当者に向けてメッセージをお願いいたします。

西谷: 社会課題の解決は、一社だけで成し遂げられるものではありません。エコ・ファースト推進協議会は、多様な業種・業態の企業が集い、ともに学び合いながら活動できる非常に貴重な場だと感じています。
加盟企業約100社の中で、小売業として全国のお客様と直接接点を持つ企業は限られています。だからこそ、私たちならではの視点や役割を活かしながら、皆様とともに社会へ貢献していきたいと考えています。
店舗ネットワークやお客様との接点を活用することで新たな価値を生み出せる取り組みがあれば、ぜひ加盟企業の皆様と一緒にチャレンジしていきたいと思います。

鈴木: 同じBtoC企業の皆様はもちろん、異業種の皆様とも新しい取り組みを生み出していきたいと考えています。会議や懇談の場でお話しすると、多くの刺激や新しい視点をいただくことがあります。
一方で、アイデアを具体的なプロジェクトへとつなげていくことは簡単ではありません。だからこそ、企業の枠を超えて自由に議論し、共創につなげていける環境づくりが大切だと感じています。
エコ・ファースト推進協議会には、そのような可能性が数多くあると感じていますので、今後も皆様とともに新しい挑戦を進めていければと思います。

木下: 協議会での活動を通じて、日々多くの学びや気づきをいただいています。
どの取り組みも最初から大きな活動だったわけではなく、小さなアイデアや挑戦から始まったものが少なくありません。そうした取り組みを積極的に発信することで、より多くの方々に関心を持っていただき、新たな活動や参加の輪が広がっていけば嬉しく思います。
今後も加盟企業の皆様とともに学び合いながら、エコ・ファーストの活動を盛り上げていけることを楽しみにしています。

2026年8月、株式会社ビックカメラ本社にて、取材・文:株式会社ゼロボード 渡慶次 道隆